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自己破産と年金の関係|自己破産しても差し押さえられない公的年金

自己破産と年金の関係|自己破産しても差し押さえられない公的年金

年金受給者が自己破産した場合、年金が差し押さえられたり、年金の受給が止められたりすることはないのでしょうか?

また、自己破産しても、将来、年金を受給する権利に影響はないのでしょうか?

今回は、自己破産と年金の関係について解説します。

1.自己破産しても自由に管理できる財産がある

自己破産しても、変わらず公的年金を受給できるのか?

このような不安をお持ちの方も少なくないでしょう。

答えの前に、自己破産した場合の財産の取り扱いルールについて、基本から解説しておきましょう。

「公的年金を受給できるのか?」という問いに対して、少し遠回りになるかもしれませんが、破産手続きの仕組みや根底にある考え方を知ることで、必ず理解が深まるはずです。

破産手続きの目的をコンパクトにまとめると、「破産者の財産を金銭に換えて、債権者に分配すること」と表現することができます。

つまり、破産手続きにおいて、破産者は自分の財産を管理・処分する権限がなくなってしまうのが原則なのです。

しかし、本当にすべての財産を失うとしたら、その後の生活が立ち行かなくなるため、怖くて誰も自己破産などできません。

そのため、自己破産した場合であっても、一定範囲の財産については、引き続き自由に管理・処分することが認められています。これを「自由財産」といいます。

自由財産には、大きく分けて「新得財産」、「破産財団から放棄された財産」、「差し押さえ禁止財産」の3つの種類があります。一つずつ順番に確認していきましょう。

(1) 新得財産(しんとくざいさん)

自己破産を申し立てると、裁判所は、申立人に支払い能力がないといえるか(=破産状態にあるかどうか)、破産申立書などをもとに審査します。

そして、審査の結果、破産状態にあると判断した場合には、裁判所は「これから破産手続を進めます」という決定を出します。これが「破産開始決定」です。

破産手続きでは、この「破産開始決定」を基準にして、それより前か後か、という考え方をする場面が多いので、覚えておくとよいでしょう。

新得財産とは、文字どおり破産開始決定の“後”に新たに取得した財産のことをいい、破産開始決定後に得た「給料」などが新得財産の典型として挙げられます。

たとえば、破産開始決定後にいくつも仕事を掛け持ちして働き、100万円の月収を得たとしましょう。

この100万円は、破産開始決定後に得た新得財産ですから、すべて自分のものです。「そんなにお金があるなら債権者に分配しなさい」と裁判所に命じられる心配はありません。

もっと極端な例を挙げれば、破産開始決定の翌日に宝くじを買い、運よく1000万円が当たったとしても、新得財産ですから債権者に分配する必要はないわけです。

(2) 破産財団から放棄された財産

もし破産者が土地や建物などの不動産を所有している場合には、裁判所から選任された破産管財人が、その不動産を売却して金銭に換え、債権者に分配します。

しかし、同じ不動産でも山林や原野などは、そう簡単に買い手が現れて売れるものではありません。

そればかりか、売却するまで固定資産税の負担が生じます。

このように、お金に換えようがない、またはほとんど価値がない財産の場合は、破産管財人が売却を断念して放棄してしまうことがあります。

破産管財人が放棄した財産は、自由財産として保有が認められます。

(3) 差し押さえ禁止財産

今回のテーマを理解するうえで重要なポイントとなるのが差し押さえ禁止財産です。

まず差し押さえ禁止財産について簡単に説明しましょう。

たとえば、人に貸したお金を返してもらえない場合、裁判を起こして勝訴判決を得れば、相手の財産を強制的に差し押さえることができます。

しかし、いくらお金を返さないからといって、あらゆる財産を根こそぎ差し押さえてしまうと、債務者は最低限度の生活さえ成り立たなくなってしまいます。

そのため、法律によって、絶対に差し押さえてはならない財産が指定されています。

これが「差し押さえ禁止財産」です。

破産手続きでも、「差し押さえ禁止財産」に該当する財産は処分の対象とならず、自由財産として保有が認められています。

ここまで随分と前置きが長くなりましたが、公的年金を受給する権利は差し押さえ禁止債権に該当します。

したがって、自己破産した場合でも、公的年金を受給する権利は一切影響を受けません。自己破産しても、公的年金は従来どおり受給できるので安心してください。

(4) その他の差し押さえ禁止財産

「差し押さえ禁止財産」について、もう少し補足しておきましょう。

先ほど説明した、「最低限度の生活を守る」という趣旨から、公的年金の受給権だけではなく、生活保護を受給する権利(生活保護法58条)、労災保険を受給する権利(労働基準法83条)なども差し押さえ禁止財産とされています。

したがって、生活保護を受給している方が自己破産しても、生活保護を受給する権利に影響はありません。

ただし、生活保護を受給しながら、借金を繰り返していたような場合には、破産に至る経緯に問題があるので、免責が認められなくなるおそれがあります。

民事執行法131条には、差し押さえ禁止「動産」も規定されています。動産とは、要するに「モノ」のことです。

たとえば、「生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」(同条1号)は、差し押さえ禁止動産とされます。

自己破産しても、衣類やふとん、たんすなどの家財道具は自由財産として保有が認められます。また、家財道具には、テレビ、冷蔵庫、エアコンなどの電化製品も含みます。

ただし、たとえ衣類や家財道具であっても、高級品については、自由財産として認められない可能性があるので注意が必要です。

たとえば、何十万円もする着物や高級家具などは、「生活に欠くことができない」とは言い難いため、売却処分して債権者への分配にあてるのが原則となります。

また、差し押さえ禁止動産としてこのほかにも、実印その他の印(同7号)、仏像、位牌(同8号)、学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具(同11号)などがあります。

一般的には、自己破産すると何もかも失う、というイメージを持たれがちですが、実は手放さなければならないものは限られます。

むしろ、自己破産しても日常生活を送るうえで何も変わらないように配慮されている、と考えた方が正確でしょう。

2.自己破産した場合、将来の年金受給権はどうなるか

ここまでの説明によって、おおよそ答えの察しがつくと思いますが、自己破産しても、将来の年金受給権を失うことはありません。受給開始年齢を迎えれば、ちゃんと年金を受給することができます。

では、なぜ将来の公的年金の受給権はなくならないのでしょうか?

たとえば、50歳で自己破産した場合、この時点ではまだ年金を受給していないので、「差し押さえ禁止財産だから」という理由では説明できません。

将来の公的年金の受給権は「破産開始決定後の新得財産だから」と考える方が適当なのでしょう。

理屈はともかく、もし自己破産しても、将来、公的年金を受給する権利には何ら影響を及ぼさないので安心してください。

3.自己破産はペナルティではない

自己破産は、借金を返せない人に対するペナルティだと誤解している人も多いようです。

たとえば、「自己破産すると破産の事実が戸籍に載る」、「自己破産すると選挙権がなくなる」といった話を聞いたことはないでしょうか?

まるで常識であるかのように語る人もいますが、どちらもまったくのウソです。

自己破産したからといって、戸籍に載ることもなければ、選挙権がなくなることもありません。

たしかに、市町村役場の破産者台帳に記載される、という運用はありますが、破産手続きが終われば台帳からも抹消されます。

そもそも自己破産の手続きは、借金を返せなかったことに対する罰ではありません。

冒頭で、破産手続きとは「破産者の財産を金銭に換えて、債権者に分配する手続きである」と説明しましたが、実は、破産手続きにはもう一つの重要な目的があります。それは、破産者の生活再建です。

実際、破産法には「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする」と定められています(第1条)。

こうした観点から考えても、自己破産したことで公的年金が止められたり、将来、公的年金を受給する権利を喪失したりしてしまうなど、到底あり得ないことだとわかるはずです。

4.まとめ

公的年金に限らず、自己破産することによって、現在の生活あるいは今後の生活にどのような影響が生じるのか、不安も多いのではないでしょうか。

自己破産を検討しているなら、まずは弁護士に相談してみてください。
泉総合法律事務所にご相談いただければ、債務整理のプロである弁護士が借金問題の解決まで責任もってサポートさせていただきます。

ご相談は何度でも無料となっておりますので、是非一度ご連絡ください。

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