自己破産手続による資格制限と復権について
「自己破産によって職業が制限されてしまう」と聞いたという方も多いと思います。
実際、自己破産により制限されてしまう職業(資格)は存在します。
では、自己破産によってどのような職業が制限されてしまうのでしょうか。
制限された職業は元に戻るのでしょうか。戻るとしたら、どの時点で戻るのでしょうか。
この記事では、自己破産と職業・資格の疑問について説明します。
1.法律による資格制限
破産法それ自体には資格制限は定められていません。
ただし、それぞれの政策的目的から、各職業の資格について定めた法律によって、破産者に対して資格制限が設けられています。
そうした各法律の制限によって、一定の資格については破産手続開始決定後に登録をしようとすると登録を拒否されることになります。
また、すでにこれらの資格・地位を得ている場合には、破産手続開始決定によってその資格や地位を失うことがあります。
資格制限のある主な職業としては以下のものがあります。
公法上の資格制限
弁護士(弁護士法7条5号)、弁理士(弁理士法8条10号)、公認会計士(公認会計士法4条4号)、司法書士(司法書士法5条3号)、税理士(税理士法4条3号)、警備員、保険外交員(生命保険募集人) 等私法上の資格制限
後見人、保佐人、補助人、遺言執行者 等
士業以外に、警備員や保険外交員等についても資格制限があることには注意が必要です。
株式会社の取締役が破産手続開始決定を受けると、取締役の地位を失うことになります。
これは、会社と取締役との関係は委任関係とされており、破産手続開始決定を受けることで、民法上委任関係が終了してしまうからです。
現行会社法は、破産手続開始決定を受けたことを取締役の欠格事由とはしていないので、破産することで取締役になれないという資格制限はありません。
したがって、株主総会で破産した人を改めて取締役に選任する決議を行うことで、引き続き取締役の職務を行うことができます。
2.資格制限の消滅・復権
では、上記のような資格の制限はいつまで続くのでしょうか。
このような制限は「復権」することによって消滅します。
復権には、「当然復権」と「申立による復権」があります。
当然復権には次の4種類があります。
- 免責許可決定の確定
- 債権者の同意による破産手続き廃止決定の確定
- 再生計画認可決定の確定
- 破産手続開始後破産者が詐欺破産罪について有罪判決を受けることなく10年を経過したとき
一方、申立による復権は、破産者の申立てに基づき裁判所が認める復権です(破産者が破産債権者全員に対する債務について、弁済・免除・消滅時効等により責任を免れた場合)。
実務上、一番多い復権の形は、免責許可決定の確定による当然復権です。
免責許可決定とは、債務者の負っていた債務をこれ以上返さなくてよい、と許可する裁判所の判断のことです。
自己破産の手続きを利用して債務を整理する場合、返し切きれなくなった債務について、債務者の財産を清算して債権者に配当し、それでも残ってしまった債務について返さなくてよいとの裁判所の判断をもらいます。こうして支払うべき債務が免除されることを「免責」と言います。
そして、債務者にとっては、この「免責」の許可決定を受けられるかどうかが重要なわけです。
免責許可決定が確定することで、債務を返さなくてよくなるだけでなく、さまざまな法律によって課されていた資格制限が消滅することになります。
なお、免責許可決定は裁判所による判断ですが、確定するのは免責許可の決定の事実が官報に掲載されてから2週間が経過したときです。
したがって、裁判所の免責許可決定から、免責許可決定の確定による復権までには多少のタイムラグがあります。
3.資格制限が問題になりそうなときは泉総合法律事務所へ
資格制限が問題になるのは、自己破産の手続きを取った場合のみです。
したがって、現在の職業が資格制限の対象になりそうなときは、自己破産ではなく、任意整理や個人再生という別の債務整理の手続きをとるという方法もあります。
また、例えば警備会社に勤めているような場合であって、勤務先に事情を説明できるならば、警備業務以外の業務に配置転換を行うことで、資格制限を回避できる可能性もあります。
職業制限が心配なときには、そもそもどのような債務整理の手続きをとることが適切なのか、自己破産の手続きを取ったうえで不利益の回避が可能かどうかという点について専門的な判断が必要です。
心配なときは、まずは一度泉総合法律事務所立川支店へご相談下さい。
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