特定調停のメリット・デメリット
債務整理の中でも費用が格段に安いのが特徴の「特定調停」ですが、いざ自分で手続きをしようと思うと、特定調停のメリット・デメリットが気になる方も多いでしょう。
「コストがかからない分、やはり債務者にとって不利な点があるのでは?」と考えるのも当然です。
そこで今回は、特定調停をお考えの方のために、特定調停がどのような手続きなのか、特定調停のメリット・デメリット、手続きの流れ、不成立になってしまう理由までわかりやすくご説明いたします。
このコラムの目次
1.特定調停について
(1) 特定調停とは?
借金の返済が苦しくなり、債務整理をご検討中の方はできるだけコストを抑えて手続きをしたいと思うでしょう。
債務整理には主に4つの手続きがありますが、その中でもコストがかからず自分でもできるのが特徴の手続きが、特定調停です。
特定調停とは、債務の支払いが困難になった場合に、調停委員会が債務者と債権者の間に立ち、当該債務に関する支払い、主に利息の減額等につき話し合う債務整理手続きを指します。
弁護士や司法書士などの専門家に依頼せずとも、調停委員が間で債権者との話し合いを取り持ってくれるため、債務者にとっては比較的簡単にできる手続きといえます。
特定調停は、利息を整理する点で任意整理と似ていますが、裁判所を介するかどうかという点では大きく異なります。
(2) 特定調停の人気がないって本当?
「コストも低く、自分でできる債務整理手続き」と聞いたら、多くの人が利用していそうです。
実際に、平成15年頃は多くの人がこの手続きを利用していました。
しかし、年々人気はなくなってしまい、最近では特定調停を選択する人が全体の3%にまで落ち込んでいます。
その理由としては、以下が挙げられます。
- 任意整理よりも最終的な残債務が多く残ることがある
- 大幅な債務の減額は見込めない
- 調停成立まで利息を付加して支払うことがある
- 完済まで将来利息を付加して支払うことがある
- 過払金が発生しても別途手続きが必要
簡単にまとめると、手続きのコストがかからないのは利点ですが、債務の減額幅が結果的に任意整理よりも少なくなってしまうことがあるというのが理由です。
調停成立や完済まで利息が増えてしまうこともあり、任意整理の方が利息のカット率が高かったというケースもあります。
これは、各裁判所で特定調停において統一した基準がないため、調停内容が裁判所や事件ごとに変わってしまうという問題があるためです。
(任意整理の場合は、弁護士会の統一基準に従い、利息の引き直し計算を行います。)
2.特定調停のメリット・デメリット
次に、特定調停のメリットとデメリットを見ていきましょう。特定調停の手続きを行うかどうかを見極める参考にしてみてください。
(1) メリット
- 自分で手続きができる
- 手続き費用が1社あたり500円と郵便切手代程度
- 自己破産のような職業制限や借金の理由を問われることがない
- 調停委員が間に入って交渉を手助けしてくれる
- 強制執行が止まる
まず、自分で手続きができる点です。弁護士・司法書士などの専門家に頼らずにできるため、手続きをしやすいというメリットがあります。
任意整理の場合だと、弁護士・司法書士費用がかかってしまうため、これを理由に特定調停を選ばれる方も多いようです。
また債権者1社ごとにかかる費用も、1000円かからずにできるのは魅力的です。
そして自己破産のように、資格制限により従事している職を一時的に失うこともありません。借金の理由がギャンブルであったとしても、特に聞かれることがないため問題ないでしょう。
申立て手続き等自分でしなければいけませんが、一旦申立書を提出して受理されれば後は調停委員が間に入って手助けしてくれるため、法律に詳しくない場合でも手続きを進めていくことができます。
さらに、強制執行ができる場合でも申立てが受理されれば裁判所が手続きの停止を命じることができるのもメリットと言えます。
(2) デメリット
- 督促を止めるのが遅くなってしまう
- 残債が任意整理より多くなることがある
- 申立て書類は自分で記入する必要がある
- 平日に仕事を休んで出向かなければいけない
- 特定調停では解決できないこともある
弁護士に任意整理を依頼すれば、受任通知の時点で督促をストップすることができます。
しかし、特定調停の場合は申立てが受理されてからであるため、迅速に催告や督促などの取り立てをストップできないという問題があります。
先にお話ししたように、残債が思ったよりも多いというケースもあるでしょう。
また、申立て書類の記入は自分で行わなければいけないため手続き負担があります。
調停が始まっても、平日しか裁判所は開いていないため、仕事を休んで裁判所に行かなければいけないという負担もあります。
さらに、特定調停では、大きな借金の問題は解決できないため、個人再生や自己破産の手続きが必要になることもあります。
3.特定調停のやり方
特定調停の手続きをする場合は、自分である程度手続きの流れを把握しておく必要があります。
そこで、特定調停の流れと不成立になる理由についてご説明します。
(1) 特定調停の流れ
特定調停の流れとしては、以下の通りです。
- 申立書を受け取りに窓口に行く
- 申立書を作成し、裁判所に提出する
- 債権者に特定調停の申し立てが通知される
- 第一回調停期日
- 第二回以降調停期日
- 調停調書の作成・調停不成立
まず、申立て準備として管轄の簡易裁判所の窓口に特定調停の申立書を取りに行きます。このとき、どのような書類が必要で費用はいくらかかるのか、などの説明を受けることができます。
申立書等、必要書類の準備ができたら、もう一度裁判所を訪れ申立てを行います。このとき、費用も支払います。
申立てが受理されると、特定調停を開始したことに関する通知が各債権者に送付されます。申立てから約1ヶ月程度で第一回調停期日が設定されるでしょう。
第一回調停期日では、債務者のみ調停委員と話し合いを行います。現在の債務の状況や返済計画について尋ねられます。
第二回目以降では、債務者・債権者・調停委員で話し合いを進めていきます。貸金業社の場合は、電話で担当者と話すことになることが多いようです。
第二回目で折り合いがつかなければそのまま第三回と調停が続きます。
話し合いがまとまったら、調停調書を裁判所が作成します。調停調書が作成されたら、決まった内容通りに返済を進めていくのみです。
話し合いに折り合いがつかなかった場合には、調停不成立となります。
もっとも、裁判所が考える基準に達していれば、17条決定といって、返済条件等が決定されることもあります。
(2) 調停不成立になるケース
債権者にとっては、特定調停の話し合いにメリットは少ないため話合いが決裂してしまうことも少なくありません。
調停不成立になるケースとしては、以下が挙げられます。
- 債権者との話し合いが不調に終わった場合
- 債権者が調停に応じない場合
- 債権者が期日に裁判所に来ない場合
債権者にとって利息がカットされ大きな損を被ることになる場合は、交渉が決裂してしまい、話し合いが不調に終わることもあります。
そもそも債権者が調停に応じないなどもありえるでしょう。
また、債権者が定められた期日に裁判所を訪れない場合、交渉ができないため調停を続けても無意味となってしまい、不成立となってしまうことがあります。
裁判所はなるべく不成立とならないよう、先にお伝えした17条決定で将来利息をカットする形で調停調書を作成することも多いようです。債務者ができるだけ経済的更生を図れるよう手を尽くしている結果だと考えられます。
このように、場合によっては不成立となってしまう可能性があるため、確実に債務整理を進めたい場合は弁護士に任意整理を相談してみるのも1つの方法です。
4.債務整理に失敗しないために、弁護士へ相談を
せっかく特定調停の手続きを行なったのに、残債があまり減らず、手続き期間中に利息が増えてしまったなんてことは避けなければいけません。
できるだけコストをかけたくない気持ちはわかりますが、手続き自体は不調に終わっては意味がないので、まずはどの手続きをすべきか、弁護士に相談することをおすすめします。
ご自身のケースでどの債務整理手続きが適しているか、迷っている場合は弁護士にご相談ください。
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