自己破産をすることによる結婚への影響はある?

借金返済が出来なくなり、将来的にも返済出来る見込みがない場合は、自己破産で借金を整理することを視野に入れることをお勧めします。
しかし、結婚を前提に付き合っている人がいる場合、「自己破産が結婚へどのような影響を与えるか?」「自己破産をパートナーに打ち明けたら結婚出来なくなるのでは?」といった様々な不安で手続に踏み切れない方もいることでしょう。
果たして、自己破産をすると結婚にはどのような影響があるのでしょうか?また、パートナーには内緒にしておけるのでしょうか?
このコラムの目次
1.自己破産が原因で結婚出来なくなることはない
最初に、自己破産が結婚に与える制度面での影響について解説をします。
(1) 破産法に結婚を制限する規定はない
自己破産をすると、借金を全て免除して貰える代わりに、資産価値の高い財産は没収・換価され、債権者に配当されます。
また、破産法の規定により、場合によっては、破産手続中、一時的に職業や居住地(転居)について制限が生じます。
しかし、破産法に結婚を制限する規定はありません。
破産期間中及びその前後を含めて、自己破産が理由で結婚が出来ないということはありません。婚姻はいつでも自由にすることが可能ですので、ご安心下さい。
(2) 自己破産は離婚の事由にならない
勿論、自己破産をすると、家族の生活にも、それなりに影響は生じます。

[参考記事]
自己破産すると家族への影響はある?
しかし、自己破産は法定離婚事由にはならないので、自己破産をしたことを理由に配偶者から別れを切り出されても、他に離婚原因となるべき事実がないのであれば、裁判や調停になっても離婚は認められない可能性は高いです。
2.自己破産による悪影響
このように、自己破産をしても、法律上は結婚自体に大きな影響は発生しませんが、以下のデメリットが、実際の結婚生活に影響を与える可能性はあるでしょう。
(1) 自分名義の財産の処分
前述の通り、自己破産をすると、自分名義の財産は処分されます。
もっとも、全ての財産が処分されるかと言えばそうではなく、(裁判所にもよりますが)多くの場合は資産価値が20万円以上の財産(例えば、時価20万円以上の自動車、解約返戻金の総額が20万円以上ある場合の保険等)だけが、その対象となります。
資産価値の高い財産と言えば、第一に住宅が該当しますが、マイホームを処分されれば、家を明け渡さなければなりません。
しかし、自宅が賃貸であれば、住まいは他人名義の財産なので、処分の心配はありません。これまでに家賃の滞納がなければ、明け渡す必要もありません。
また、日常生活で使う生活必需品は、法律上、差押禁止財産とされていて、破産手続においても処分が禁止されているので、身の回りのものについては処分される心配はありません。
さらに、現金については、99万円までの現金は、自己破産後の生活費として手元に残すことが出来ます。

[参考記事]
自由財産について|自己破産をしても手放さなくてよい財産
(2) ブラックリストの登録
自己破産をすると、以後5~10年の間、信用情報機関に事故情報が登録されます。
いわゆるブラックリスト入りで、情報が登録されている間は、自分の名義の借り入れやクレジットカードの作成、ローンの締結は出来なくなります。
なので、カードを作らない・作れないことをパートナーに不審に思われたことがきっかけで、破産の事実を打ち明けざるを得なくなった、という事態も考えられます。
(3) 職業制限
自己破産をすると、一部の職業については資格制限されるので、一定期間、その仕事に就くことが出来なくなります。
対象となるのは、一部士業、警備員、旅行業者、生命保険募集人、建築業、公務員の委員長や委員(教育委員会、公正取引委員会など)、団体企業の役員等です。
これらに該当する場合は、破産手続開始決定から、免責許可決定を得て復権までの間は、仕事が出来なくなります。資格制限を受けてから復権するまでの期間は、早い人で3ヶ月程度です。
資格制限と言っても一生出来なくなる訳ではないので、復権すれば元通りに働くことは可能ですが、公務員の委員長や委員については自己破産開始決定により退職、もしくは罷免となります。
ただし、資格制限期間中の、あるいは、資格制限の事実を受けて復権後の収入が減る(減らされる)ことで、家庭に迷惑がかかる可能性はあります。
なお、免責不許可となった場合は、破産手続終了後も復権出来ません。

[参考記事]
自己破産手続による資格制限と復権について
(4) 引っ越しの制限
破産手続が管財事件という手続となった場合、破産手続期間中に居住地を変更する(引っ越しする)には、裁判所の許可が必要です(その他、海外旅行・長期間の旅行についても許可が要ります)。
ただし、この制限も、破産開始決定から免責許可決定までの数か月間に限ったことですので、長期間に渡って自由に引っ越しが出来なくなるというということはありません。
なお、破産手続前であれば、当然、引っ越しはいつでも自由に行なうことが出来ますが、引っ越し先によっては、破産を申し立てるべき管轄裁判所自体が変わることもあり得ます。

[参考記事]
自己破産における管財事件とは?
3.破産後の結婚による家族への影響
以上の悪影響を踏まえて、ここからは、自己破産後に結婚をした場合における家族への影響について解説をします。
結論から言えば、自己破産後に結婚をしても、配偶者、その他の家族に直接的な影響を与えることはありません。
しかし、既にブラックリスト入りしているので、情報が登録されているうちは、ローンの借り入れができません。
住宅ローンや車のローンを組むにしても、配偶者名義でローンを組んで貰う必要があります。
また、ブラックリスト入りしている期間は、クレジットカードを持つことも出来ません。
特に、キャッシュレス決済が進む昨今、5年以上もクレジットカードを持てないと、不便を感じる場面も多いと思いますので、この点も気がかりです。
しかし、クレジットカードに関しては家族カードを利用することも出来ますし、それが出来ない場合も、デビットカードを活用することも出来ます。
4.パートナーには正直に打ち明けるべき
結婚を控えた人が自己破産を恐れているのは、制度の問題というよりは、自己破産の事実を打ち明けることで「パートナーや相手の家族の信頼を失って、破談になってしまうのでは?」という思いもあるからでしょう。
確かに、これから結婚するのに、配偶者となる人が自己破産をすると聞けば、パートナーとしては先行き不安になるかもしれません。
しかし、自己破産を内緒にしたまま結婚をすると、その先はもっと茨の道です。
ローンを組めないことが分かれば、相手から不審がられるでしょうし、クレジットカードを全く持っていないとなると、(カードを持たなければいけない義務はないので、そのこと自体が悪い訳ではないのですが)やはり不自然に思われるでしょう。
したがって、自己破産を知られたくないからと黙ったまま結婚をしても、相手にバレるのは時間の問題かもしれません。
むしろ、結婚後に発覚したとしたら、「どうして最初から打ち明けてくれなかったのか」と、それこそパートナーとの信頼関係は根底から崩れてしまう可能性すらあります。
自己破産をすることは、なかなかカミングアウトしにくいことかも知れませんが、理由によっては、相手の理解を得られることもあるでしょう。それでも結婚をするという決意をするのであれば、決意を新たに、二人で協力して新しい生活を築いていくことも出来ることでしょう。
これから先の結婚生活を壊さないためにも、自己破産の事実についてはパートナーに誠実に伝えることをお勧めします。
5.自己破産なら弁護士へ相談を
自己破産をすると借金を全額免除して貰うことが出来ますが、代わりに自宅や車などの資産価値のある財産は没収をされます。
大きな財産がある人にとっては一大事ですが、借家住まいで、車もなく、預貯金も僅かであれば、実質的には何も財産を失わずに借金を整理することが出来るでしょう。
自己破産することで、生活にどれだけの影響があるかはケースバイケースですが、もし、今現在督促に追われているのであれば、結婚前に自己破産をして、心機一転、新たな生活を始めることをお勧めします。
泉総合法律事務所立川支店では、自己破産解決の経験が豊富にございます。また、結婚を控えた方のご不安についてもお応えすることが可能です。
借金問題は対処が早いほど解決の選択肢も広がります。状況によっては自己破産以外の解決策を提案することも可能かもしれません。
自己破産の相談は何度でも無料ですので、どうぞお気軽にご相談下さい。
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